■2010.5.5
珍しく目覚ましを使って4時半に起きて、日本のバラエティ番組を観ながら準備をした。旧駅付近にあるバスターミナルまで歩き、さて予定通りの5時50分発に乗ろうと思っていたが、小さなマイクロバスが目の前に止まり、しかも電光掲示で「火車新站」とある。ターミナル内にある掲示板を見ると、違う系統だが5時45分発で新駅を経由するものがあるため、それであろう。
それに乗ろうとしている乗客は、かなりのじいさん3人のみ。そんなバスに乗るのも面白いと思い、念のため運転手に行先を訊いてみたが、なんと「station」すら通じない。しかしここは漢字圏で生まれた人間の強み、すぐに「火車新站?」と紙に書いてバス自体を指さしたら、うんうんと頷いた。それを見ていた客のじいさんは「あおら~」みたいな声を出して笑顔で驚いていた。

@右にあるバスでなく、あえてこれに乗る勇気
駅に到着してから、駅窓口で花蓮までの切符を買う。どうせ話せないので、これまで何回も繰り返してきたように「台東→花蓮 普快車 全票(單程)1張」と書いた紙を出す。たいていはそのまま発券してくれるのだが、係員が「ファーリェン?」と念押しするように訊いてくる。「ふあーりえん」とベタな発音で返したが、要するにこんな列車で通して乗るような奴はいないのだろう。花蓮までの運賃は162元(約480円)。4時間近くも乗ってこの値段だから、かなりの安さである。
今日の編成は昨日と同様に3両で、前の1両が手動扉で、残り2両が自動扉である。最後の車両に乗って開けっ放しの後ろの風景を見ようと思ったのだが、車掌がなんやら大声で前の車両へ促す。よくわからないが、最後の車両は閉め切っているようであった。


@花蓮行の普快車
定刻に出発。乗客は15人程度いるからなかなかの賑いだが、すぐ隣の駅やその次でわらわらと降りてしまった。約1時間後に到着した池上は駅弁で有名な駅であり、朝の8時前だというのに立ち売りの駅弁屋が2人ほどホームにいた。掛け声は「べぇんとぁぅー」である。ここで買っておきたいところだが、朝早いためやっていなかったらどうしようという杞憂の元、昨晩に台東駅で買ってしまったのである。いるとわかっていれば、ここで買ったのにと思う。

@池上駅弁当(前日夜撮影)

@池上駅ホームから田んぼを見渡す
池上を過ぎると車内は閑散とし、2両目は私だけになった、1両目も、鉄と思しき人だけである(この人は昨日の枋寮からの列車にも乗っていた人である)。つまり、まともな乗客は誰もいないということでもある。
辺りは米どころということもあり、暑さを気にしなければまるで日本の一風景のようである。東里を過ぎるとちょっとした峠越え区間となり、峠のトンネルを超えてからはまた稲作風景が続き、瑞穂からはちらほらと乗客も増え始めた。
冷房はなく扇風機の風だけだが、昨日と違って若干の雲が日を遮ってくれているので、それなりに快適である。すこしうつらうつらとしたところで、定刻より2分早い10時56分に花蓮に到着した。ここで2時間ほど時間があるので、近場の美崙山公園へ歩いたりして時間を潰した。昼食の時間帯なので花蓮の駅弁か花蓮名物のワンタンでも、と言いたいところだが、暑さで食欲もあまりないのでコンビニのアイスだけにしておいた。
花蓮からは、またしても大宇製の各駅停車である。景勝地のタロコ渓谷が近いこともあり、沿線は石灰岩の工場などが多く見られた。

@廃線になった、港方面への支線
途中、車掌が切符の確認に来た。蘇澳までの切符を見せると、あれこれ言ってくる。おそらくは「乗り換えが必要だ」ということだと思い、自作の予定表を見せると、そこにあれこれ書き込んでいる。要するに蘇澳新に14時30分に着くから、そこから乗り換えて云々、なのであるが、それはもう予定表に書いてある。追加であれこれ書いてもらうとそこは中国語になってしまうので逆に難しくなってしまうが、しかし、よその国からの乗客を親切にしようという意図は充分に感じられた。ほどなくし、花蓮から約1時間10分の乗車で蘇澳新に到着した。
同じく東海岸沿いにある台東と花蓮は、幹線の開通後に沿岸近くにある旧駅への支線は廃線となってしまったが、ここ蘇澳だけは市街地への支線が残されている。どうしてかはわからなかったが、実際に来てみると、新駅近辺は小高い山も多くセメントの工場がある程度だから、旧駅を廃止してここを開発するのが難しかったのも理由の一つなのだろう。また蘇澳自体が前出の2都市ほど大きな町でもないため、開発するほどの需要もないのかもしれない。
それはとにかく、支線へと乗り換えて蘇澳へと向かう。入線してきた車両は、日本車両製の新型車両であった(やっと巡り合えた)。いそいそと乗り込む。

@やっと新型車両に
蘇澳にはすぐに到着した。ここは冷泉で有名なところである。プールのような施設で皆で水着で入ったりするのだが、まだその季節でもないため柵から垣間見える施設内は閑散としている。それでも、若いカップルが観光に来て門前で記念写真を撮ったりもしている。

@駅も街も小ぢんまりとした蘇澳
することもなく適当に市街地の市場やお寺を見て、駅へと戻り台北までの切符を買った。台北までは、先ほどの新型車両で戻ることになる。座席の一部が進行方向へ向いて座れるようになっているので快適である。
途中、駅弁で有名な福隆と瑞芳では立ち売りの売り子が例の「べぇんとぁぅー」を連発している。明日は瑞芳に昼時に来る予定であるため、そこで買おうと思う。
八堵からは地元の中学生たちが大量に乗り込み、車内は騒がしくなる。その喧騒は台北まで続いた。
■2010.5.6
今日は台湾北部の支線等を巡る旅であり、今回の旅程のうち最もゆったりとしている、いわば中休み的な日である。
朝はホテルの朝食を頂き、8時前に台北駅へ着くように歩いた。近距離路線ということもあるので、初めての自動券売機体験で切符を購入した。目的地は港町の基隆である。
乗ろうと思っていた列車は多少遅れて入線してきて、そのためか混雑している。とりあえず乗り込んだが、ラッシュとは逆方向であるから次の列車なら空いているかもしれない。それと、昨日の車窓から松山のホームで鉄道観光の広告をたくさん見かけたので、それも見られるだろうという思いから、隣駅の松山で一先ず降りることにした。
ほどなくして入線してきた電車はガラ空きであった。平々凡々な台湾の旧い街並みの中を快走し、10時少し前に基隆に到着した。
到着後は、徒歩で観光である。観光についてはこれまでに倣って詳細省略するが、約2キロ強離れている仙洞巖は地元の人でも歩いて行くような所ではなく、大人しい野良犬や放し飼いの飼い犬ばかりの台湾では珍しく、口輪をした(つまり危険な)犬に追われたり、すれ違うトラックの多さに辟易としながらの移動であったが、洞窟やお寺は誰も観光客がいなくて長閑であり、また帰り際には地元の賑やかな祭り(見物人は私1人だけ)に遭遇したりと、徒歩旅ならではの良い偶然にも巡り合えた。

@名も知らぬ地元の祭り(爆竹の連発)

@流れていた曲は生歌(そしてなぜかセクシー衣装)
そんなミニ旅を終えてから10時55分発の電車に乗ってすぐに八堵で乗り換え、瑞芳へ到着したのが11時35分。次に乗るべき平溪線の発車まで1時間半ほどあるため、昨日書いたようにここで駅弁を買った。ホームにいる立ち売りから買ったというのは何年ぶりであろうか(うろ覚えだが、熊本の八代駅だったかと思うが、何年前かまではよく思い出せない)。

@瑞芳駅の売り子さん

@駅構内には鉄コーナーも
13時02分発の3両編成の菁桐行は、乗車率100%弱で出発した。二駅ほど幹線を間借りして走り、そこから分岐していく。
この路線は以前は炭鉱の搬出に利用されたもので、今でもそれに関連する施設が見学用として残されている。今回の台湾旅行では連日快晴だったが、今日は空模様があまり良くなく、ここでちらほらと雨が降り始めた。右手には渓谷が沿い、それが左側に移り、突然街中の商店街の軒先をかすめながら走ったかと思うと、途中駅の十分に到着である。
ここは台湾の天燈と瀑布、そして先ほど軒先をかすめたように、老街のど真ん中を走る列車で有名なところである。1時間半弱ほど時間があるので滝まで行ってもいいのだが、それよりは反対側の列車が老街を走るところを見てみたい気もする。あれこれ考えたが、後者を選んだ。

@十分老街

@駅近くに残る炭鉱設備
ほどなくして、瑞芳へ行く列車が来るのが見えてきた。柵も何もなく、商店と商店の間に引かれている鉄道を列車が走っていくという、かなり特異な風景なのであるが、それが恰も当然かのように周囲と溶け込んでいるような気がした。
滝の途中まで散策してから十分駅へと戻るが、ここで雨が本降りになってきた。老街から抜け出てきた14時51分発の列車に乗り込んだ。
終着駅の菁桐は旧い瀟洒な建物であり、小ぢんまりとした街が続いている。ゆっくり散策してもよさそうだが、雨もあるため、それは次の機会(いつかはわからないが)にすることにして、駅前の商店街やホームの向かいにある旧い石炭用の施設を写真に撮っただけで、すぐに折り返す列車に乗り込んだ。

@終着の菁桐駅
雨の中を戻っていくが、平溪の駅付近などもその建物の混乱具合(?)がなかなか面白そうなところである。晴れた日にもう一度来ても楽しめそうなところだ。
今日はそのまま台北まで戻り、夜市であれこれと買い、呑んで食べて寝てしまった。
■2010.5.7
今日は「鉄」な旅である(台湾に来てから毎日そうじゃないか、と言われそうだが)。彰化にある機関庫と苗栗にある鉄道車両を見学し、無料路線に乗車してくる予定である。
台北からは6時05分発の復興号である。車両も古く扉も空きっぱなしで走るような客車だが、料金としては電車の普通列車と変わらないため、座席を指定してもらえる分こちらの方がお得とも言える。指定された席は窓側で、車両の後ろ側で海側、という塩梅に良い場所であった。
出発後、まだ地下から抜けきらない板橋で待ち合わせ。ここで環島之星に追い抜かれる。今回の旅では乗ることができなかったこの列車だが、結果的には何回も目にすることになった。

@環島之星(2日目に撮影。お姉さん付きで)

@4日目に撮影(こちらもお姉さん付きで)
途中の竹南までは初日に乗車済みであるため、海線に分岐するまでは適当に景色を眺める。さて、海線に入るぞという所は押さえなければならないところだが、肝心なところでうつらうつらとしてしまい、気付いたら大山を通過していた。
海線と言っても、海が見える区間はわずかしかない。風力発電の大きな施設がいくつか見え、その先に海が確認できるところがあったかと思えば、すぐに見えなくなってしまうため山線との沿線風景の大きな違いは感じられなかった。
彰化には9時44分に到着した。扇形の機関庫があるところまでは歩いて10分程度ということだったので歩き出すが、それと思しき施設が見えるものの塀と線路の向こう側なのでどうしようか、と考えそうになったところで地下道入口が現れた。丁寧に車庫への案内も書いてある。
機関庫の入口では、日本人であることを伝えると、手書きのノートに書かれた日本語での注意事項を指差しで示され、パスポートを預けて区域内に入ることになる。言われたようにすると、中ではすでに団体さんが中国語での案内をされていた。
機関庫には12もの車庫が転車台(ターンテーブル)に向かって配置され、その左側にはSLが、中央にはディーゼル機関車が、そして右側では実際に工員が作業中の機関車が停められていた。観光施設ならまだしも、作業中の施設まで見学できるとは、やはり台湾は鉄な人にやさしい土地柄のようである。


@扇形機関庫とターンテーブル

@猫も車両見学中

@このポスターはここで撮影されました
あれこれ見学したのち、霧雨が舞う中を駅へと戻った。11時14分発の自強号に乗り込み、苗栗を目指す。台湾到着初日に買った切符であるが、その際には席が取れなかった。しかし実際には空いている席があったので、そこで座って車窓を眺めた。
定刻の12時06分に苗栗に到着した。しかしここで雨がスコール並みの本降りになってきてしまった。30分ほど軒下で待機していたが、止む気配がないので歩き出した。鉄道車両の展示施設までは徒歩10分程度であったが、膝下は濡れ、カバンの中の資料類も少し湿ってしまった。
苗栗鐡路車輛文物展示館は、かなり広大な土地に10両以上の機関車等が展示され、その上にはしっかりとした建築による覆いが施されている。天候のせいなのかどうなのかはわからないが、辺りには人がいなくて私だけであった。

@苗栗鐡路車輛文物展示館

@旧い木造車両も
展示されている車両は、SLはもちろん、森林鉄道で使用されたものや、木造客車、米国や日本の制作によるディーゼル機関車等々、多種多様である。10分ほどでさらっと見終わったが、さて雨の勢いがさらに増して帰るに帰れない(その気になれば行けるのだろうが、全身ずぶ濡れになること間違いない)。急ぐ旅でもないし、施設内で雨の勢いが治まるのを待つことにした。車両を2回も3回も見て回り、降りやまない雨と睨めっこをする。結局、1時間弱ほど施設内にいた。
小雨になったところで駅へと戻り、電車に乗り込む。新竹では1時間ほどの乗り換え時間を利用して市内観光をし、今日の最終目的地の桃園には16時半頃に到着した(余談だが、新竹駅前の露店にふらっと寄ってみたのだが、店の裏側が廃線跡になっていた。このようなものを公園風に残している辺りも、鉄にやさしい台湾である)。

@新竹駅前公園の露店裏側
ここからは林口線という路線があるのだが、なんと乗車賃が無料なのである。もともとは貨物線としてできたものであり、その路線を利用して朝夕の2往復だけ無料列車を走らせているのである。一時は桃園空港へのアクセス路線とすることも考えられたそうであるが、路盤強化等が必要であることから諦められたという話もあるらしい。
それはさておき、無料列車に乗るためホームを探すが、なかなか行きあたらない。それらしき場所は事前に調べておいたのだが、そこに行くには民間の駐車場を通らないと行けない。ええいままよでその敷地内に入ったが、駐車場で働く人から中国語でなんやらと言われてしまったので、予定表の「海湖」を指すと、あっちだというジェスチャーで答えてくれた。つまりは、この駐車場を通らないと行けないということであった(あまりに挙動が不審だったから声をかけてくれたのだろう)。

@やっと見付けた
17時10分発の列車は定刻通りに走り出した。2両連結で、乗客は10人ほどである。運転室が覗けないので実際の速度はわからないが、時速30キロ程度ではないだろうか。それでも車両が左右にゆさゆさと揺れるくらい、路盤は貧弱である。
次の駅の桃園高中では、大量の生徒が乗り込んで車内は騒がしくなった。無料で朝夕にしかないのなら、通学客にとっては好都合な列車であろう。
駅ごとに生徒がちらほらと降りて、終着の海湖には17時50分に到着した。「さてここで折り返しか、でも雨がひどいな」と思って列車を降り、傘をさしながら線路が伸びている先を写真に収めていると、なんと列車は数人の客を乗せたままその先へと行くではないか。事前に調べた限りでは終着駅は海湖であるし、海湖駅のホームにある表示板にもその先の駅は記されていない。もしかしたら、以前の林口線の客扱いが途中の長興までで、その後に海湖まで客扱いするようになったため、この先の駅(林口駅)までも客扱いするようになったのかもしれない(しかし帰国後に調べたが、終着駅の林口は貨物のみしか扱わない、とウィキペディアでも記載されていた。事前に公式ページからダウンロードした時刻表にも、終着駅は海湖と記載されているし、始発の桃園に掲示されていた時刻表も同じであった。謎は深まるばかりである)。
ホームにいたボランティアらしき人(出発等の旗振り役をしていた人)に「……海湖……→?」と紙に書いて見せたが、いやいや反対側だ、と首を振る。しかし、これは私の訊き方が間違えていたのかもしれない(「あっちに行く列車はこれからあるか?」という質問だと思われたとしたら、そう答えられてしまうだろう)。
よくわからないが、大雨の中10分ほど待ち、終着駅より先の駅からやってきた車両に乗り込む。そうすると、すでに乗客は20人ほどいるではないか。

@駅に掲示してあった時刻表も海湖までだったけどなぁ…
腑に落ちない気持ちのまま桃園へ戻り、有料の電車に乗り換えて台北へと向かった。
※後日、ネットで指摘を受け、信号(踏切)切り替えのために海湖駅より少し先まで行くことを教えてもらった。
■2010.5.8
台湾旅行の実質的最終日、せめて1日くらいは観光客っぽいことでもしようかと思い、この日はタロコ渓谷のツアーを申し込んでそれに参加した。台湾国内線の復興航空に乗ったり、きれいな渓谷を眺めたりと、それなりに特筆すべきことはあったが、鉄旅でもないので省略させていただく。
ただ気になったのが、ツアーで半強制的に行かされた部族舞踊の会場近くに、旧い車両とSLが展示されていたということである。舞踊見学の後に石の博物館へ行き、その後は宝石類の展示即売会場に30分ほど軟禁(?)されたのだが、ツアーにありがちなそのようなお買い物に時間を割かれるよりも、その車両のことを確認したくて仕様がなかった。次に花蓮に来る機会があるかどうかはわからないが、もしあれば自転車かスクーターでも借りて駅から来てみたいと思う。

@気掛かり
■2010.5.9
さて、本格的な海外旅行としては初めての台湾旅行も最終日である。今回の航空券はマイル特典で来たのであるが、復路は手配の都合上、関西国際空港での乗り継ぎとなってしまった(しかも6時間の空き時間も出来てしまう)。台湾発も8時40分と早めである。
時間になって搭乗口へ近づくと、空港なのに鉄道のレールがなぜか見える。その先には、模型の車両があって、森林鉄道の観光PRをしている。こんなところまで鉄にやさしいお国柄なのだな、と最後の最後になってまた思わされた。

@桃園空港搭乗口にて
【以下もご覧ください】




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