プチ移住第3回・北海道帯広市編(4日目~6日目)

プチ移住
ふるさと銀河線

■はじめに
 北海道帯広市でのプチ移住であるが、4日目は糠平や士幌方面(国鉄士幌線関係)、5日目は大樹や広尾方面(国鉄広尾線関係)、6日目は陸別や本別方面(旧ふるさと銀河線関係)への訪問である。

■2025.8.2
 今日から4日間は、バス旅である。使用する切符は「ビジットトカチパス」であり、1日間用は2,000円、2日間用は3,000円である。後者であれば1日当たりたったの1,500円で乗り放題であり、かなりお得な切符である(単純往復だけでも、糠平で3,060円、然別湖で3,360円(往復切符で買えば2,900円)、広尾で4,400円、陸別で5,300円にもなってしまう。しかも、パスなら途中下車し放題である)。
 6時頃にホテルを出て、駅前にあるバスターミナルへ。件のパスを購入した。

@2日間用パス

 なおこのパスは、地元民は購入できない。買えるのは、外国人を含む旅行者だけである(購入時に、住所が分かる身分証を提示した)。
 しばらくすると、7時05分発のぬかびらスキー場前行のバス(行先標は「ぬかびら源泉郷」行)がやって来た。このバスは、国鉄士幌線のルートをほぼほぼなぞるように走る路線である。

@糠平行

 定刻に駅前バスターミナルを出発した。車内には数人の高校生が乗っているが、士幌や上士幌で下車してしまい、それ以降は私1人だけになってしまった。
 8時51分、糠平営業所で下車した。キャンプ場に続く坂道を降りていくと右手に線路が見えて来るが、これが士幌線跡である。

@レールが残る

 なお糠平から先、終点の十勝三股までは乗客がほとんどいなかったこともあり、代行バスが走っていた区間である。よってこのレールの部分に列車が走っていたのは、代行バスが運行を開始する1978年よりも前、ということになる。
 線路の上を歩いて行くと、糠平駅跡に鉄道資料館がある。今日は開館日ということなので、だいぶ前に訪問済であるが今回も入ってみることにした。入館料はたったの100円と、財布に優しい。

@鉄道資料館

 説明文をあれこれ読むが、それにしても、林業が盛んであった昭和29年には、十勝三股には1,500人近くの住人がいたというのは驚きである。林業の衰退と共に少なくなり、昭和52年にはたったの14人に。それだけでは、列車を走らせる意味はないだろう(代行バスも意味がないと思うが、簡単に廃線にすることもできなかったのであろう)。ちなみに糠平から十勝三股までの営業係数(100円儲けるのに必要な経費)は、22,500円であったとのことで、赤字で有名な芸備線の閑散区間のようである(物価の違いを考慮すると、士幌線のこの区間の方が深刻であろう)。

@展示の例

 資料館を出てから再度レール上を歩いて戻り、ひがし大雪自然館(無料)を見学してから、再度廃線跡(もうレールがない部分)を歩き始めた。その先にあるのは、糠平川橋梁である。
 橋の上を歩けるようになっていたため渡ってみたが、橋というものは上からでは形が掴めない。ということで、川べりまで降りて撮影である。

@糠平川橋梁

 その後は、糠平の温泉街を散策した。公園などはかなり奇麗に再整備されており、そのうち泊まりに来ようかと思った。
 復路で乗車するのは、10時13分発のバスである。これを逃してしまうと、次の出発は16時42分になってしまうため、要注意である。

@バス待合所とバス

 定刻に出発し、糠平湖に沿うように走り続け、ダムを過ぎると景色もだんだんと平坦になっていった。
 出発時の乗客は私1人だけであったが、上士幌辺りから次第に増え、士幌で下車した際には10人以上になっていた。
 士幌で下車したのは、近くに士幌駅が残っているからである。バス停から5分ほど歩いていくと、立派な駅舎が見えてきた。

@残っています

 駅舎のドアには鍵が掛かっていて中には入れなかったが、全体的に奇麗に保存されているようで嬉しい限りである。ホームやレールも残っていて、貨車や車掌車が展示されていた。

@ホームの様子

 駅周辺の撮影を終えてからは、歩いて近場にあるスーパー(Coop)へ向かった。この一帯はじゃがいもの産地でありポテトチップスの工場もあるため、ここで「生産者還元用」の商品が買えるのである(道の駅でも買えるが、スーパーの方が少し安い)。12個入りの箱もあるが持って帰りにくいため、1種類ずつ3個買ってみた。

@生産者還元用ポテトチップス

 この後は上士幌方面に戻ることにしているが、次のバスまで1時間以上あるため、道の駅まで30分ほど掛けて歩いて行った。
 「道の駅ピア21しほろ」に到着し、スタンプを押してから、休憩所で先ほど買ったポテトチップスを1袋頂いた。
 道の駅であるため鉄道ネタは皆無だと思っていたが、まさかの自販機で鉄ネタを発見した。

@士幌駅

 休憩を終えて、近くにある「士幌22号」バス停に向かった(北海道は地名の数が少なく集落も同様に少ないため、地名+数字+号(もしくは線)というバス停名が多い)。12時46分発のバスは、4分ほど遅れてやって来た。これまではずっと十勝バスであったが、これから乗るのは初の拓殖バスである(いずれもパスで乗降可能)。

@拓殖バス

 先ほど走って来た道をそのまま戻り、13時14分、道の駅かみしほろバス停で下車した。道の駅でやることとなれば、先ほどと同様にスタンプを押すくらいである。それを済ませて、道の駅を出る前に少し建物の奥の方に行ってみると、なんと士幌線に関する展示スペースがあった。うっかり、見逃すところであった。

@橋梁関係の展示

 さて、帯広方面に戻るバスの時間が迫っているため、少し急がねばならない。道の駅を出て10分くらい歩き、やって来たのは交通公園である。ここは、士幌線の上士幌駅があった場所であるが、残念ながら駅舎やレールは残っていない。士幌線と上士幌駅に関する説明版が、1枚だけ寂しくあるだけである。

@上士幌駅跡

 公園を確認してから、近場にある「ハレタかみしほろ前」バス停に向かった。
 13時40分発のバスに乗るべく停留所で待っていると、反対側の車道を無人運行のバスが走ってきた。大都会では難しそうであるが、これだけ交通の量が少なくて道路が広くて乗客が少なければ、こういうシステムもアリだと思う。

@左側が自動運転バス

 件のバスに乗り、帯広方面へ。駅前バスターミナルには、14時55分に戻ってきた。
 まだホテルに戻るには早いため、これから広尾線の幸福駅跡に行こうと思う。広尾線関係は明日に訪問するが、バスの本数が少ないため、下車できる回数が限られているのである。
 15時30分発のバスに乗り、市内を抜けて、幸福バス停には16時21分に到着した。幸福駅跡は、ここから歩いて数分である。
 それにしても、先ほどから雨が降っているため、少し寒いくらいである(長袖を置いてきたことを後悔)。本州では連日40度というニュースもあり、世界が違う感じである。

@幸福駅

 士幌線の廃線跡は誰も人がいなかったが(訪問者は私だけ)、さすがに幸福駅は観光地化されているため、駐車場には10台以上の自家用車があり、大型バスも停まっていた。
 売店に行ってみると、あちこちから中国語が聞こえてくる。確かに、「幸福」は中国標準語でも「幸福」(シンフー)だから、縁起が良いのであろう(ちなみに、「手紙」は日中で意味が全く違い、中国だとトイレットペーパーになってしまう)。中国人の団体さんへのグッズ売れ行きも、見たところ良いようである。

@幸福駅跡にあるキハ22

 敷地には、2両のキハ22系が係留されている。この車両での思い出は、今から39年前、名寄本線の峠区間(それほど勾配はきつくない)でこの車両がウンウン唸っているのにかなり遅かったので運転席を覗いてみると、時速30キロ程度しか出ていなかったことである。
 見学を終えてから敷地を後にして、17時25分発のバスで帯広市内へ戻った。

■2025.8.3
 昨日までは駅まで約3キロ歩いていたが、今日はホテル前にあるバス停からバスに乗ればいいから楽である。7時32分発の、広尾行に乗り込んだ。

@忠類で停車中(道路向いには忠類駅がある)

 最初の目的地は大樹駅跡であるが、それより少し手前の大樹柏木町バス停で下車した。というのも、この近くの公園にSLが保存されているからである。

@9600形(広尾線や士幌線でも活躍した模様)

 SLを見終えてからは1キロほど南下して歩き、道の駅に辿り着いたところで左へ曲がり、しばらくすると右手に見えて来るのが大樹駅として使用されていた駅舎である。今日はまず、「駅舎が残っているところ」ということでここに来た次第である。

@大樹駅

 駅の裏手にはホームも残っているが、レールなどはすべて撤去されてしまっていた。それらを確認した後は、道の駅や近隣のスーパーの散策である。

@駅ホーム

 事前に調べた限りでは、大樹町の郷土資料館(日曜しか開いていない)に広尾線の資料があるらしいが、そこまで歩くとなると1時間必要であり、これから乗る予定のバスに間に合わないため、諦めることにした。
 しばし道の駅の待合室で涼みつつ休憩しつつPCで旅行記を書き、それでも時間があったのでまた外に出てみた。交差点の向こう側には不自然な道があるが、これは広尾線の路盤跡である。

@広尾線跡

 歴舟川の堤防でお祭りの準備の様子を見たりしてから道の駅に戻り、10時30分発の帯広方面行バスに乗り込んだ。乗客は私を含めても2人だけであるが、もうこういう数字に慣れてきている。
 次の目的地は中札内であるが、直行したのでは時間が余ってしまうため、中札内美術村バス停で下車した。一応、普通の観光要素も入れてみようと思う。
 有料ゾーンもあるが、ほとんどの建物が無料であり、充実した美術タイムであった。

@森の中に佇む展示館

 その後は、中札内方面に向かって歩き出した。目的地は、やはり駅跡を利用した鉄道記念公園である。
 50分ほど歩き(今日は晴れていて若干暑い)、やっと中札内駅跡に到着した。車輪を使ったモニュメントがあり、また短いホームには貨車が係留されている。

@駅跡

 その後は更に数分歩いて、道の駅へと向かった。スタンプを押し、しばし涼を取る。
 続いて、13時20分発の広尾行に乗り込んだ(8分ほど遅れてきた)。大樹までは、午前中に乗った景色と同じである。
 しかし、大樹の道の駅に到着したときに「車両の調子が悪いので交換します」となってしまった。いそいそと、別の車両へと移動した。

@左手が調子が悪く、右手に交代

 定刻から10分ほど遅れて出発したが、広尾には定刻から4分だけ遅れた14時46分に到着した。
 広尾の駅舎はだいぶ前に解体されており、前回訪問時は工事中であった新しいバスターミナルが完成していた。すぐ隣が鉄道記念公園で、車輪のモニュメントや広尾線の紹介文が掲示されている。

@交通公園

 折り返しのバスまで1時間以上あるため、十勝神社に行ったりスーパーで涼んだりして時間を潰した(スーパーは冷房があるし、椅子もある)。
 バスターミナルに戻り、15時57分発の帯広行バスに乗り込んだ。出発後は、景色の逆回しを見続けるだけである。帯広市内では若干乗客が増えたが、多くの区間で2~3人だけであった。
 ホテルの最寄バス停までは乗らず、その少し前で下車した。というのも、先日の市内散歩で中札内の田舎とりを使った店を発見していたためである。

@この店

 今日はまさに、養鶏で有名な中札内に行ってきたばかりであるため、買うなら今日である。鶏の味が一番出やすい「半身揚げ」を購入した(900円と良心価格)。
 ホテルに歩いて戻り、早速一献である。今日の締めの一品は、YouTubeで某料理研究家が絶賛していた「やきそば弁当たらこ味バター風味」である。

@今日のセット

■2025.8.4
 7時頃にホテルを出て、駅方面に向かった。帯広駅の近くには40度まで計測できる大きな温度計があるが、先々週の猛暑では暑過ぎてそれが表示されなくなったとのニュースがあった。今日は24度くらいであり、無事に表示されている。

@これが普通

 今日も2日間用のトカチビジットパス(3,000円)を窓口で買い、7時43分発の陸別行に乗るべく待っていた。しばらくしてバスがやって来たが、後ろ半分は乗れなくなっている。調べてみると、運送業者との協働で荷物を運搬できるように改造しているとのことであった。
十勝帯広におけるローカルハブでの共創によるコミュニティ活性化事業 |

@後ろは乗れません

 定刻に、駅前バスターミナルを出発した。このバスは池田まで根室本線に沿うように走り、それ以降は「ちほく高原鉄道ふるさと銀河線」に沿う形となる。終着まで2時間50分も掛かるため、お尻が心配である(鉄道なら走行中に歩いて解せばいいが、路線バスでは走行中に歩くことができない)。
 座席が少なくなって大丈夫か心配していたが、それなりに乗客がいたのは帯広市内だけで、それ以降は3~5人程度であった。
 池田駅前バス停で、トイレ休憩があった。トイレには行きたくないが、お尻のために下車して適当に歩いた。

@撮影もしてみる

 池田出発以降は長閑な景色の中を走り続け、終着の陸別には10時33分に到着した。降りてすぐ目の前には「道の駅オーロラタウン93りくべつ」があるが、ここが鉄道の駅であった場所である。ホームは解放されていて、敷地内に入るのは無料である。

@陸別は「日本一寒い町」

 駅構内では、運転体験が行われていた。日本各地で運転体験ができる場所があるが、高額である所が多い。ここは、最安でたったの3,000円(しかも最近値上げしたばかりで、それまでは2,000円)なのである。私もかなり前(15年くらい前)に、ここで体験をしたことがある。いずれにしても、このような形で車両やシステムが保存されて、動き続けていることは嬉しい。
(動画を撮ったので、家に帰ってからアップします)

@運転体験車両が通り過ぎていく

 陸別自体はかなり小さい町であり、周辺の展示物(南極観測車など)を見学しても、もう手持無沙汰である。道の駅にコンセントのあるスペースを発見したので、しばし休憩である。
 12時00分発の帯広行が来たので、それに乗り込んだ。この路線バスは運転本数が少ないため、昨日のような「行ったり来たり」作戦が出来難い。次の下車地について、足寄にするか本別にするかギリギリまで悩んだが、本別で降りることにした。本別の方が、鉄道の残存物が多いからである。
 農村風景を眺め続け、13時10分に到着した本別で下車した。道の駅の裏手には、鉄道駅であった時代の跨線橋などが残っている。

@本別駅跡

 さて、これで見るべきものは終了である。「そういえば本別にはCoopがあったな」と思ってそこに行ってみると、なんと廃業していた。地方の人口は漸減しているから、仕方ないのであろう。
 仕様がないので10分ほど歩いて違うスーパーに行ってみると、そこには無料休憩スペースがあったため、またしてもPC作業である。
 さて、先ほど「行ったり来たり作戦が出来難い」と書いたが、これから陸別行のバスに乗って仙美里(せんびり)で下車すれば、5分だけだが折り返しのバスまで時間を確保できることがわかったため、それを実行することにした。
 本別南1丁目バス停から陸別行に乗り、仙美里には14時52分に到着した。ここへ来た理由は、駅舎跡に仙美里鉄道資料室があるからである。
 早速、中へ。パネル展示だけの簡素な内容であったが、初めて訪問することができた。

@資料室

 14時59分発発の帯広行バスに乗り、ひたすら戻る。帯広には、16時56分に到着した。昨日まではここからホテルまで歩いていたが、今日はバスのパスがあるため、循環線に乗ってスズランプラザ前まで移動した。
 昨日までは肉尽くしであったが(初日の刺身を除く)、そろそろ魚にしたい。ということで、鰊の刺身と(私は鰊の刺身が好きなのだが、内地ではまずお目に掛かれない)、ホッキの刺身(同様に、内地では茹でたピンク色しかない)を買ってきた。なお右側にある2品は、昨日の広尾線シリーズで買っておいたものである(中札内の道の駅で買った卵と、広尾のスーパーで買った大樹の納豆)。

@晩餐

 溶けるような生の鰊と甘い生ホッキでさんざん呑んでから、最後の締めは先日買っておいた「インデアン」のカレーである。レンジよりも湯せんがおすすめらしいので、そのように作ってみた。こってりとしたルーで、コクのある味わいであった。

@インデアン

【以下もご覧ください】

プチ移住第3回・北海道帯広市編(1日目~3日目)

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